七月七日から順平が僕を無視するようになった。
突然のことだったので、正直僕が何をしたのか分からない。
分からないけど、謝るなんて事をきっと彼は認めないだろう。
僕はただ気にしていないという風に振舞うしかなかった。
 
一時期の冷めた時間
 
「あのさ、最近二人ともどうしたの?」
放課後になり先に帰る順平を見て、ゆかりが僕に声をかけた。
「いつも二人で帰ってたよね?順平機嫌悪そうだったし…。奏魔君何かしたの?」
「分からない」
僕が答えると、ゆかりはため息をついた。
「…君って分かりにくい性格してるからね。どっかで怒らせちゃったんじゃないの?ま、順平も順平だけどさ。」
「分からないけど…。ずっとこのままだと僕は嫌だ。」
僕が思ったことを言うと、ゆかりがくすりと笑った。
「へぇ…君もそんな風に思うんだね。じゃ、私これから勉強するから。じゃあね。」
ゆかりも教室から出てしまった。
僕も勉強しようと思い、図書室に篭る事にした。
 
変化があったのは試験の最中だった。
朝、ばったりと順平に会ってしまった。
意外にも声をかけてきたのは順平の方だった。
「あ、えっと…さ、勉強したのか?」
「あまりしてない」
「そっか。…ま、俺には関係ねーけどな。」
じゃ、行くわ、と順平は先に行ってしまった。
順平は謝りたいのだろうか…?
僕には分からない。
 
それから、何回か順平に朝会うようになった。
話しかけてくれるのだが、それはぎこちなくすぐに先に行ってしまう。
僕はいつものように言葉少なく返しているのだが、順平にはそれが不満なのだろうか。
そしてテスト終わりに彼が話しかけてきた。
「あ、あのさ…八加」
僕の名前だけを呼ぶと、なにやら言いにくそうにしている。
言葉を捜しているのか、タイミングが掴めないのか。
「…謝りたいの?」
僕がそう聞くと、順平があからさまに動揺した。
「えっ、いや…」
「謝るなら素直に謝ったらいいんじゃないの?」
「う、うるせぇな…。俺だってずっとこのままなの嫌だけどさ。どう切り出せばいいかとか分かんなくてさ…。」
僕は思わず笑ってしまった。
交友関係の広そうな彼が、まさかこんなことで悩んでいるとは。
「笑うなよ、八加!恥ずかしいだろ!」
「だ、だって…順平ってこういう事には慣れてそうだったもんだからさ…。」
お腹痛くなってきた…笑いすぎた。
順平は顔を真っ赤にしたまま帽子の唾を下げ、表情を見られないようにした。
「本気であんなこと言えるやつなんかいなかったんだよ…。悪いかよ。」
「僕が順平にとってそうなれているなんて、とても幸せだよ。」
「とたんに笑顔になるな、おまえ。」
「そうだね。僕は順平が好きなんだから。」
よほど恥ずかしかったのか途中で困ったように笑っていた。
「ったく…。もうこんな話は終わりだ!終わり!」
ペースを取り戻すかのように、声を上げる順平。
僕は立ち上がり、順平の手を取る。
「なら、今日は一緒に帰らない?」
「そうやって毎日俺を誘ってんだろうが…。」
「いいじゃないか。今日はどこにしようかな…。ゲーセンとかどうかな?」
順平もいいね!と乗り気になり、僕を引っ張り始める。
「ゲーセンなら、格ゲーとかやるか?」
「スカッとしたいなら、付き合うけど。」
「よーし!じゃ、行こうぜ!」
「ちょっと、順平早いってば!」
僕らは元通りの仲になり、前よりもうっとおしいと周りに言われた。
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主順ってかなり平和だと思った。
八加はいろいろ無関心に見えて、サディスト。